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かぶろぐ

【 蒼天 】管理人「かぶ」こと鏑矢トシキの、生活臭漂うユルくてだるくてダメくさいカンジのブログです。

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何かしたかったから……

ずっと気になってて、作業もイマイチ、ノッてこない。
だったら吐き出すのが一番かな、と。

短いお話を用意しました。
本編終了後、数年か十数年経った頃の話。
ネタバレはないけど……
まぁあえていうなら「ユウヒは王様になってます」ってコト、かな?

今までの本編の内容から、想像のつく展開。
それ以上のコトはないと思っていただいて大丈夫。
いや、なんだかんだでユウヒは王になれず……ってな展開もアリだと思っている方がいるとしたら、それはまぁ王様になっちゃうっていうネタバレにはなるかもですが。

そんな方、いるのか!?

ってカンジの短編です。

・ユウヒ即位後、数年~十数年が経過している。
・本編にちょっとだけ出る、超スーパー脇役が主役の話。
・王様になっている、って事以外のネタバレはない……ハズだ。

ってことで、よくわからんがばっちこい! の方は先へどぞ!

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
■□
■□  『 その小さな手のひらに 』
■□
■□  ※本編終了後、小説ページに移動する予定です。
■□■□■□

 何かのついでにふらっと立ち寄っただけ――。

 その人は、そんな風に突然、私の店にやってきた。
 いるだけでその場の空気をも変えてしまうその人は……――。

「いらっしゃい! 今日も暑いわねぇ」

 そんないつも通りの言葉で客を迎え入れる。
 ヒヅから入ってきた最近流行りの玻璃の器に、氷を入れ、水を注ぐ。
 それを手にその客の方を振り返った私は、思わず言葉を失った。

「久しぶり。その……わかるかな、私の事」

 そう言って、ばつが悪そうに顔を歪めたその人は……。

「あ、覚えてない? それとも人違いかな? そうだよね。もう随分時間が経ってしまった。調子のいい事言っておいてこれだもの」

 呆然としたまま、どうにか案内した席に座らせる。
 無意識に、入り口から一番奥まった席を選んだ私に、その人は礼を言って頭を下げた。
 そこでハッと我に返る。頭を、下げた!?

「あ、あなたは……っ!!」

 驚いて声を上げた私を、その人は慌てて制する。
 私は思わず口に手を当てて、それに続くはずだった言葉達を呑み込んだ。

 ――ユウヒさん?

 間違いなく、その人だった。
 驚いたのは、ここにいるはずもない立場の人だからというだけの理由ではない。
 以前に見た時と、ほとんどその容姿が変わっていなかったからだ。
 そう。まるであの時から、時間が止まってしまっているかのように。

「あの……」

 長い沈黙の後、やっと口を開いた私に、その人はにこりと笑って言った。

「やっぱり、人違いじゃなかった。大きくなったね、チコ」

 入り口を背にし、逆光にはなっていたが、その顔は間違いようがない。
 今ではこの国の王となった、ユウヒさんだった。

   ◆◇◆◇◆

 あの日――。
 町中を逃げ回り、今にも崩れそうな民家に飛び込んだ私達家族に、思いもかけない出会いが待っていた。
 その民家には既に先客がいて、 それがユウヒさん達だった。
 私を庇うように両親は肩を抱き合い、その震える体に支えられた私は生まれて初めて「死」というものを意識した。

 その時、その場にいた女の人がゆっくりと立ち上がり近付いてきた。
 両親の、私を抱く力が一層強くなった時、その人は言った。

「私の名はユウヒ。ごめんなさい、あなた達を巻き込んでしまって……」

 そう言って私達のすぐ横に屈むと、穏やかな声でこう言った。

「そんなに脅えないで。何もしないから。それより……お腹、空いてませんか?」

 その時、図ったかのように私のお腹が鳴り、両親はおそるおそるその腕を解いてその女の人の方を見た。
 私はお腹が鳴ったことが恥ずかしかったけれど、そんな事を忘れてしまうくらい驚いたのは、両親がいきなり正座して、その女の人に向かって平伏してしまったことだ。
 女の人は申し訳無さそうに顔を上げてくれと懇願し、両親はおずおずと顔を上げた。
 その後、背後にいた男の人達に呼ばれて、私達家族はわけもわからず、渡された握り飯や何かをむさぼるように食べ続けた。
 それまで食べたどんなものよりも、すごくおいしかったのを覚えている。

「おいしいか?」

 にっこりと笑って言ってくれた、きれいな服を着た男の人がいた。
 私はうんうんと何度も頷きながら、周りにいる人達をきょろきょろと見渡した。
 その人達と両親の話は少し難しくて、当時の私にはよくわからなかった。
 そんな私に気が付いたのか、ユウヒという女の人が、私にはなしかけてきた。

「名前、なんていうの?」
「……チコ」
「チコっていうんだ。へぇ~、そりゃすっごい人になるね」
「……なんで?」
「だってさ、私の婆ちゃんと同じ名前だもん。うちの婆ちゃん、すごいんだよ?」

 そう言って笑ったユウヒさんは、私にいろいろな話をしてくれた。
 そんな話のうちの一つだったと思う。ユウヒさんは私に聞いてきた。

「ねぇ、チコ。あなたの夢は何?」
「ゆめ? ゆめって何?」
「え? そうねぇ……大人になったら、何になりたいか、とかかな」

 私は少しだけ考えてからこう答えた。

「……こんなおいしいご飯が、たくさん食べたい……です」

 そう言った私に、ユウヒさんは少し驚いたような顔をしてから、その後、そっか……と言って、私の頭をぐりぐりと撫でてくれた。
 それから何だかすごく泣きそうな顔をして、私の手をとると、じっと見つめてこう言った。

「あのね、チコ。私が王様になったら、こういうおいしいの、たくさん食べられるようにしてあげるね。チコにも、チコのご両親にも、お友達にも」

 王様って、何を言ってるんだろうって思ったけれど、私は何も言わずにユウヒさんの言葉に耳を傾けていた。
 ユウヒさんは、ずっと握り締めていた私の手を広げると、その掌に自分の手を重ねて静かに言った。

「チコ。この手はね、なんでもできるすっごい手なんだよ。この先、チコはいろんな人に出会って、いろんな事を経験しながら大きくなっていくの。そしていつか、何か自分のやりたい事を見つけて、そしてこの手でそれを実現していくの。ジツゲン、わかるかな? こうなったらいいなって思ってることを、本当にしていくことだよ」

 私には少し難しくて首を傾げてしまった。
 ユウヒさんが小さく笑って私の手を離すと、私の掌には何かの種が一つ乗せられていた。

「これ、なあに?」
「ん? あぁ、これね。何かの種。チコにあげる」
「ありがとう」

 人に何かもらった礼を言う、両親からの言いつけ通りに私は礼を言った。
 ユウヒさんは私の頭をぽんぽんと撫でながら微笑んだ。

「何が育つかわかんない種。今のチコといっしょだよ。どんなふうに大きくなるかな、花は咲くのかなって、そういうのが全部詰まってるの。チコは、どんな風になるかな。どんなお花、咲くかなぁ」

 私はユウヒさんが言おうとしてる事が何となくわかった気がした。
 そしたら今まで考えたこともないような言葉が、私の口をついて出た。

「私……こんなおいしいご飯を、いろんな人に食べさせてあげたい」

 ユウヒさんはまた驚いたような顔をしたけど、すぐにくしゃくしゃな顔で笑って、私の事をぎゅっと強く抱き締めてくれた。

「そっかそっか。じゃ、私にもおいしいの、食べさせてね」

 そう言ったユウヒさんはすごく嬉しそうで、私はつい勢いでうんっと大きく頷いていた。

   ◆◇◆◇◆

 ただ、それだけだった。
 それだけの会話を、おそらくこの人は覚えていたのだろう。
 だから今、ここにいるのだろうと……なんとなく思った。

 あの日、遠まわしな言い方をしてでも、私に夢を抱くことを教えてくれた人。
 その小さな掌の中に、大きな可能性が秘められているということに気付かせてくれた人。
 私がここ、王都ライジ・クジャに小さいながらも店を構えたのは、あの時のあのやりとりがあったからだ。
 お礼が言いたかった。話したい事もたくさんあった。
 だがそれを伝えたい本人は、私達の手の届かないところに行ってしまった。

 ずっとそう思っていた。

「あの……ユウヒさん。なぜここに?」

 絞りだした私の言葉に、ユウヒさんはいたずらな笑みを浮かべて言った。

「けっこうあちこち出歩いてんのよ、私。でね、この店の評判聞いてさ」

 何の気なしにそう言うが、この人は紛れもなくこの国の王である。
 次の言葉を継げずにいる私に、ユウヒさんは言った。

「ね。おいしいの、食べられるんでしょ?」

 裏通りある小さな店だ、出せるものなんて知れている。
 どこにでもあるような家庭料理屋で、味には定評があるが、所詮はただの飯屋である。
 しかし不思議とこの店の中に違和感なく馴染むその人は、にっこり笑って言うのである。

「おすすめは何? お腹空いてるのよ」

 私は込み上げてくるものを無理矢理押し込めて答えた。

「おまかせしてもらえれば、自慢の料理をすぐお持ちいたします」

 ユウヒさんは嬉しそうに笑って言った。

「そう、お願い。もうすぐ私を追いかけて連れも来るから、多めにお願いできるかな?」
「はい! 喜んで!!」

 私はそう言って、店の奥に戻って泣いた。

 しばらくして、呆れたような苦笑を浮べた男の人が店に入ってきた。
 私達の案内を断り、迷いもせずにユウヒさんの向かい側に座ると、ぶつぶつと小言を言いながら料理をすごい勢いで食べ始めた。
 慌てて水を運んでいくと、礼と共にこう言った。

「ユウヒから聞いてはいたんだ。来るのが遅くなって悪かったね」

 私はその顔にも、どこかで見たような面影を感じた。
 店は段々混みあってきて、気付くと二人の姿はなくなっていた。
 伏せられた皿の下には、飲食した分の代金が過不足なく置かれていた。

 ――憶えててくれたんだ。

『チコ。この手はね、なんでもできるすっごい手なんだよ』

 賑わう店の中を行き来しながら、私はそっと、自分の手のひらを見つめた。

<< おしまい >>

なんか、どどーっと打っちゃったから、過去形現在形、入り乱れております。
読みにくい! 読みづらい!! 本当に申し訳ないんだけど。

本編終わったら、そこいらちゃんと直して小説ページに持っていきます。

更新ないのに遊びにきてくれるみなさんに感謝。
少しでもお返しできたらと、ソッコーで打ってみました。

では、作業頑張ります!!

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